片麻痺の患肢管理に悩むあなたへ|生活になじむ新たな患肢管理の提案

こんにちは!carewillの作業療法士ハルです。

リハビリ専門職の方で、麻痺した腕の管理に悩んだ経験はありませんか?

私自身、作業療法士として臨床で働いていた頃、「アームスリングを使っていてもずれてしまう」「三角巾は首や肩が痛くてご本人が着けたがらない」「一人暮らしで着けなおしができない」といった悩みに直面することがしばしばありました。

この記事では、現場の悩みに寄り添った患肢管理の新たな選択肢を紹介します。患者さんの生活に寄り添いながら、医療職自身も納得できるケアを実現するヒントになれば幸いです。


臨床で使われている主な患肢管理の方法

片麻痺の患肢管理の目的は、肩関節の亜脱臼や拘縮、褥瘡、感覚障害などによる二次障害を防ぎ、できるだけ快適に過ごせるように支援することです。そのため、リハビリ初期からの患肢管理の介入が必要とされています。

現在、臨床で用いられている主な患肢管理の方法には以下があります。

1,アームスリング/三角巾

(左:三角巾(画像参照:スズラン)、右:アームスリング(画像参照:SIGMAX))

最も用いられているのは、三角巾やアームスリングを使用する方法です。使用場面には、車いす移乗時や乗車時、リハビリでの歩行訓練時の使用があります。
肩の亜脱臼防止に有効で、脳卒中治療ガイドラインでも、装着時におけるスリングの有用性が明記されています。

一方で、首で腕の重さを支えることになるため、首への負荷が高く、長時間の使用で首や肩に痛みを生じることが多くあります。また、アームスリングの常時装着は、麻痺側の肘を常に曲げることになり、関節拘縮や曲げる筋肉が伸長しにくくなるため、常時使用は推奨されていません。ほかにも見た目への抵抗感や、一人で着脱できない課題もあります。


2,ポジショニング(クッション・バスタオルなど)

(画像引用:Taika Wellness)

バスタオルやクッションを使ったポジショニングは、ベッド上や食事場面といった、安静時に有効な方法です。広い面で支えられるため、安定感があります。
一方で、動くと簡単にずれてしまうため、移動時には不向きです。また使用物品も多くなるため、人や場所といった外部環境によって、求めているポジショニングの再現性が乏しい課題があります。

 

3,衣類やアパレルの工夫

(画像引用:ケシャポケ)

近年、患肢を包み込む構造の衣類が登場しており、生活と麻痺側管理を両立する手段として注目されています。機能性を保ちつつ、日常使いを意識したデザインになっています。
しかし、まだ種類が少なかったり、製品として量産されていない課題があります。

どの方法も一長一短があり、患者さんの生活スタイルに応じて、組み合わせて使うことが大切です。


患肢管理がうまくいかない現場のリアル

しかし、このような患肢管理の方法はあっても、実際にうまくいかない場面は少なくありません。

アームスリングや三角巾をつけていても、一日を過ごす中で腕がずれていく、適切な位置に腕が保持されていない、アームスリングや三角巾が汚れても自分で洗えない、装着に伴う痛みから着けなくなる、アームスリングが邪魔になる、見た目が気になるといった理由から、継続して装着することが難しいこともあります。

このように、既存の三角巾やアームスリングでは適応せず困っている状況は多いのではないでしょうか。患肢管理に正解はないとわかっていても、「今の方法で本当に守れているのか」と不安になる場面は少なくありません。管理の手段があるのに、うまくいかない。そんな現場のもどかしさは、多くのリハ職が共有している悩みです。


作業療法士も開発に関わった患肢管理の新しい選択肢

そんな現場での悩みを受け、「生活の中で自然に使える患肢管理」を大切にしたウェア型製品がケアウィルの「アームスリングシャツ」です。

(アームスリングシャツ)


製品の開発には、大阪公立大学教授である作業療法士の竹林崇先生が携わっています。

この製品は、肩甲帯の安定と麻痺側上肢の巻き込み防止を両立し、見た目にも“普通の服”として馴染むようデザインされています。素材は通気性と軽量性を重視し、一年を通して着用でき、長時間の使用にも配慮しました。


アームスリングシャツには、以下の特徴があります。

1,首・肩への負担が少ない

麻痺側の固定は、腕全体を布でくるむように面で支えながら、体に密着させて行います。そのため、腕の固定性が高く、肩関節が不安定な亜急性期からも使用が可能です。

また腕の重さを、首ではなく服全体で支えるため、長時間の装着でも首・肩への負担が少なく、三角巾やアームスリングで健側の首筋を痛めた経験のある方への代替手段になります。

病院・施設を対象にしたモニターアンケート(56病院・3施設)でも、80%以上の方が「肩」「首筋と頸部」への負担軽減を実感しています。(2025.8.10現在)

一日中着ていても負担にならないよう服自体も軽量になっており、モニターアンケートでも97%の方がその「軽さ」を評価しています。入院着や普段着の上から着用しても違和感なく着られます。


2,一人で脱着できる

アームスリングシャツの着脱は一人で、簡単にできるようになっています。

最初にTシャツと同じようにシャツを頭から被り、脇口から腕を出します。患肢は、肘を曲げた状態で布を沿わせ、下部と胸部のベルクロ(面ファスナー)どうしを留め、患側の肘部にあるゴムをボタンにかければ完了です。

脇口も広くなっており、伸縮性の高い脇下のゴムと生地が作用し、腕も出しやすくなっています。構成障害(高次脳機能障害)のある方でも体感的に習得しやすい工夫がされています。自身で脱ぎ着・患肢の管理ができることが、自立支援にもつながります。

腕を出しやすい広い脇口。生地をひっぱれば脇口はさらに広がる)


3,再現性の高い患肢管理が可能

このシャツの装着は、バックルや紐の調整がなく、簡単にフィッティングできます。そのため、誰が行っても再現性の高い管理が可能です。また、アームスリングシャツは着たまま、患肢の固定と開放の切り替えができるため、着脱による手間や煩わしさがありません。

ご自身で患肢管理が簡単にできるだけでなく、介助が必要な方でも介助者が簡単に必要時だけ患肢を保護できるようになっています。


4,生活の中での使用シーンが明確

アームスリングシャツの使用場面は、主に「歩行・外出・移乗・移動」時です。

例えば回復期リハビリ病棟に入院中であれば、起床時にシャツを着用すれば、一日のなかでシャツを脱ぎ着する必要はありません。

車いすに乗る際には腕を固定し巻き込みを防止する、リハビリでの歩行訓練時だけ腕を固定する、部屋に戻ったら腕を開放して肘を伸ばす、そういった生活の中での患肢管理がご自身でできるようになります。

また、アームスリングや三角巾では見た目に抵抗がある方もいらっしゃいます。アームスリングシャツはスポーツウェアにも使われる薄手の生地で腕が主張されることないシンプルな見た目です。春夏はTシャツやブラウスの上から、秋冬はジャケットを羽織る等のコーディネートができます。

実際に使用していただいたリハビリ専門職やユーザー様からも、「肩の位置が安定する」「外から見ても目立たず、安心して外出できる」「久しぶりに患側の落下を気にせず外出できたので嬉しかった」といった声が寄せられています。


5,洗濯可能で衛生的

三角巾やアームスリングで悩ましいのが、洗濯問題。三角巾はアイロンをかける必要が出ますし、上肢装具によっては洗えないものもあります。
アームスリングシャツは、洗濯ネットに入れて自宅の洗濯機で洗うことができます。通気性も高く、速乾素材のため乾きも早く、病棟や在宅でも衛生的に使うことができます。

 

「生活になじむ支援」という新たな選択肢を

患肢管理に悩むことは、リハビリ専門職として真剣に患者さんと向き合っている証です。だからこそ、方法に迷うのは当然のこと。

既存の選択肢に限界を感じている方には、「生活に馴染む支援」という新たな視点が役立つかもしれません。三角巾やアームスリングだけでは補いきれない場面にこそ、「服」というアプローチが活きてきます。

リハビリの現場では、患肢を“管理する”という言葉が先行しがちですが、本質的には「患者さんと一緒に使い方を見つけていく」プロセスです。ときには、「このスリング、使いづらくないですか?」と患者さんに聞いてみることが、患肢管理の悩みを解決するヒントになるかもしれません。

ぜひ一度、アームスリングシャツのような製品を選択肢のひとつとして、試してみてください。患者さんにも、リハ専門職にも、新しい患肢管理のひとつになるはずです。

carewillは、これからも当事者の方々の声に寄り添った製品づくりを続けていきます。そして、今の状況を”あきらめる”のではなく、必要とする方への選択肢をお届けできるよう、あなたの「できる」を応援します!